BizLawInfo.jp

TMI総合法律事務所所属の弁護士3名が、日米のビジネス法(とシリコンバレーのあれこれ)について好き勝手に書いています。

  • Home

  • Blog

  • Forum

  • Download

  • News/Events

  • More

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(2)

    April 14, 2015

    |

    Nobuki Takeuchi

    さて、今回からは、CN/CEの具体的な中身についてみていこうと思います。

     

    最近、Seed Roundについては、より簡易なSAFEでの資金調達が増えてきているように思いますが、主流は、まだまだConvertible Noteだと思いますし、CNの仕組みがきちんとわかっていれば、CEも理解できますので、まずはCNについてしっかりとみていこうと思います。

    で、そのCNですが、CN本体はシンプルなもので3-4頁程度と、分量はさほど多くはありません。が、そうはいっても、資金調達の一種ですので、条項自体は複雑になりますし、なぜかCNの書式は余白がやたら狭いことが多く、文字がぎっしりで結構な迫力があります(笑)

    ということで、いきなりCNの本チャン書式で交渉を始めると負担が大きいですし、交渉に無駄に時間がかかってしまう可能性大ですので、通常は、タームシートから交渉が始まります。

    このタームシートにも、色々とパターンや書式があるのですが、もっともシンプルなタームシートには、予定している資金調達額や、クロージング予定日のほかに、以下のような事項が記載されています。

     

    ①Interest Rate(利率)
    ②Term(期間)
    ③Qualified Financing(転換事由となる資金調達)
    ④Purchase Price(転換価格)
    ⑤Automatic Conversion(自動転換)
    ⑥Change of Control(チェンジ・オブ・コントロール)
    ⑦Amendment(改定)

    で、どれが重要なの?という話なのですが・・・どれも重要です。だってタームシートに書かれてるんですから、そりゃ重要でしょう笑

     

     

    ということで、それぞれの条項について以下で簡単に解説していこうと思いますが、⑧については、うっかり見過ごすと後々痛い目を見ることもありますので、しっかりとその存在を頭に入れておきましょう。


    ①Interest Rate
    そのまんまの意味で、1年間に付される利息の%です。

     

    CNの本質が借金であることをよく示していますね。数パーセント程度が通常だと思いますが、調達相手によって変わってくるところです。Applicable

     

    Federal Rates(AFR)という、アメリカの歳入庁(IRS)が毎月定めている利率の方が高ければ、そちらを利用する旨が定められていることもあります。

    ②Term
    借金ですので、もちろん返済期限(Maturity Date)があります。この返済期限までに次に説明する「Qualified Financing」を実現できないと、本当に借金を返済する必要が生じることになります。

    ③Qualified Financing

    CNが転換される事由となる資金調達のことです。どんな資金調達でもCNが株式に転換されてしまうわけではなく、一定の規模の資金調達があったときに始めて転換されます。通常は、$1millionとかそのくらいの数字が設定されます。

     

    ④Purchase Price

    CNが株式に転換される際の1株あたりの転換価格を算出するにあたってベースとなる考え方書いてあります。

     

    CNは、CNの元本と転換までに生じた利息の合計額を1株あたりの転換額で割った数の株式に転換されますので、1株あたりの転換価格が高くなれば高くなるほど、CNの保有者にとっては転換によって得られる株式数が少なくなり、CNの保有者にとってはうま味が少なくなります。

     

    逆に、1株あたりの転換価格が低くなれば、CNの保有者のうま味が増え、ファウンダーの持分が減ることになります。この「1株あたりの転換価格が高くなればなるほど、転換によって得られる株式数が少なくなる」という点をしっかり腹に落としておきましょう。

     

    その上で、キーとなるタームが「Discount Rate」や「Valuation Cap」というものなのですが、これは別に説明した方が良いと思いますので、また後日ということで。今日のところは、とにかく、「1株あたりの転換価格が高くなればなるほど、転換によって得られる株式数が少なくなる」という点を、頭に叩き込んでおきましょう。

     

    ⑤Automatic Conversion

    Qualified Financingが起こった返済期限の前に始まったら、元本と利息が自動的に株式に転換される旨が定められています。

     

    すべてQualified Financingで発行されるPreferred Stockに転換されることもありますが、最も多い転換パターンは、Preferred StockとCommon Stockの組み合わせではないかと思います。具体的な組み合わせ方法ですが、よく「Discount分はCommon Stockで、その他はPreferred Stockで」と言われたりします。

     

    これだけじゃ何のこっちゃ分からんことは確実なので、具体的な転換例を挙げつつ、追い追い説明したいと思います。

     

    ⑥Change of Control

    Qualified Financingと返済期限の到来前にChange of Controlが生じた場合(典型的には、議決権の50%以上の株式が第三者に買われた場合)に、CNがどのように処理されるのかが記載されています。

     

    例えば、

     

    「upon the election of the Note holder, either (i) all principal and interest under such holder’s Note shall be repaid with a premium equal to 100% of the outstanding principal, or (ii) all principal and interest shall  convert into shares of the company’s common stock at the valuation cap」

     

    といったようなことが書いてあり、要するに、CN保有者が、①元本+利息+元本100%分のプレミアムの返済か、②valuation capをベースに計算した数のCommon Stockへの転換(=M&AでそのCommon Stockを一緒に売れる)のどちらかを選択できるわけです。

     

    で、①が意外とくせ者なのですが、単に元本+利息を返済すればそれで終了、というわけではないんですね。「with a premium equal to 100% of the outstanding principal」ということで、元本だけでなく、元本額をさらにもういっちょ上乗せして返さねばならんということで、要するに、利息を除いてほぼ2倍の返済になります。

     

    この%部分が、例えば200%になっていれば3倍、300%になっていれば4倍ということになります。この条項、Early stageの段階でM&AでExitしようと試みた時に、かなり大きく響いてきます。

     

    例えば、$3Millionでの買収提案があった場合、その$5Millionという評価は、CNで入れてもらっているお金を含めての評価である場合があります。そんな場合に、例えば2倍のプレミアムのついたCNを$500,000ほど発行していた場合、M&AにあたってCN保有者に$1Millionを返さねばならず(メンドクサイので利息は無視)、したがって、実質的な会社の価値は$2Millionということになってしまうわけです。

     

    近年、Early StageでのM&A Exitが増加している傾向にありますが、うかつにM&Aプレミアムの多いCNを発行していたりすると、いざM&Aを進めるにあたって大変お邪魔な存在になったりします。

     

    ということで、CNの交渉をする際には、まずはM&Aプレミアムをゼロで提案し、それがダメでも、できるだけ低いプレミアム率を目指してしっかり交渉することが重要です。

     

    ⑦Amendment

    CNの改訂をするための要件を示しています。1人あたり$100,000で5人から合計$500,000を調達した際に、誰が合意すればCNの条件等を変更できるかを示しています。

     

    典型的には、

     

    「holders holding a majority of the aggregate outstanding principal amount of the Notes」

    (CNの未返済元本の過半数の保有者。上の例だと3人)

     

    などと書いてあります。残念ながら返済期限までにQualified Financingが叶わずに返済期限を先延ばししたいな〜なんて時に、全員と合意しなければならないのか?という疑問に答えるのがこの条項です。

     

    長くなってしまいましたが、CNのタームシートをざっと眺めてみました。

    次回以降、もうちょっと細部の説明に入っていきたいと思います。

    Tags:

    CB

    Preferred Stock

    Convertible Equity

    転換社債

    Seed Financing

    SAFE

    Convertible Note

    Please reload

    Featured Posts

    よく聞くリードインベスターって何者なのさ?

    August 22, 2016

    日本における創業株に関するべスティングの実務 ~創業者による買戻しであるべきか、それとも、会社による買戻しであるべきか①~

    April 8, 2016

    SAFEに関して寄せられるよくあるギモン

    December 7, 2016

    1/10
    Please reload

    Recent Posts

    SAFEに関して寄せられるよくあるギモン

    December 7, 2016

    よく聞くリードインベスターって何者なのさ?

    August 22, 2016

    83(b) Electionって日本にいるスタートアップも出した方がいいの?

    July 14, 2016

    Startupの資本構成に関するアレコレ(9)~83(b) Electionの続き~

    June 29, 2016

    Startupの資本構成に関するアレコレ(8)~83(b) Electionのいろは~

    June 23, 2016

    Series A(とかBとかC)って実際なんぼのもんなのさ?

    June 9, 2016

    Uberのピンチ!からのその後・・・

    May 12, 2016

    取締役派遣権に関するあれこれ-その1

    May 6, 2016

    日本における創業株に関するべスティングの実務 ~創業者による買戻しであるべきか、それとも、会社による買戻しであるべきか②~

    April 16, 2016

    日本における創業株に関するべスティングの実務 ~創業者による買戻しであるべきか、それとも、会社による買戻しであるべきか①~

    April 8, 2016

    Please reload

    Posted Entries
    Follow Us
    • Facebook Classic
    • Twitter Classic

    SAFEに関して寄せられるよくあるギモン

    December 7, 2016

    よく聞くリードインベスターって何者なのさ?

    August 22, 2016

    83(b) Electionって日本にいるスタートアップも出した方がいいの?

    July 14, 2016

    Startupの資本構成に関するアレコレ(9)~83(b) Electionの続き~

    June 29, 2016

    Startupの資本構成に関するアレコレ(8)~83(b) Electionのいろは~

    June 23, 2016

    Series A(とかBとかC)って実際なんぼのもんなのさ?

    June 9, 2016

    Uberのピンチ!からのその後・・・

    May 12, 2016

    取締役派遣権に関するあれこれ-その1

    May 6, 2016

    日本における創業株に関するべスティングの実務 ~創業者による買戻しであるべきか、それとも、会社による買戻しであるべきか②~

    April 16, 2016

    日本における創業株に関するべスティングの実務 ~創業者による買戻しであるべきか、それとも、会社による買戻しであるべきか①~

    April 8, 2016

    Pro Forma Cap Tableの作り方・読み解き方

    March 26, 2016

    Startupの資本構成に関するアレコレ(7)~創業株とVesting② Acceleration~

    March 11, 2016

    日本企業のアメリカ進出 ~よくあるQ&A(その2)~

    March 1, 2016

    Startupの資本構成(Capitalization Structure)に関するアレコレ(6)~創業株とVesting①...

    February 2, 2016

    Startupの資本構成(Capitalization Structure)に関するアレコレ(5)~創業株の初期投資の方法~

    January 26, 2016

    日本企業のアメリカ進出 ~よくあるQ&A(その1)~

    January 16, 2016

    アメリカの投資型クラウド・ファンディングに関するSEC Rule最終案

    December 31, 2015

    Startupの資本構成(Capitalization Structure)に関するアレコレ(4)~創業株の購入とその対価~

    December 29, 2015

    2015 to 2016

    December 21, 2015

    商事法務に論稿が掲載されました!

    December 18, 2015

    SCAMにご注意!!!

    December 15, 2015

    【ビザ】STEM-OPT延長の新ルール公表

    October 22, 2015

    Startupの資本構成(Capitalization Structure)に関するアレコレ(3)~Par ValueとPe...

    October 10, 2015

    日本Startupの資本政策(その1)

    October 8, 2015

    Startupの資本構成(Capitalization Structure)に関するアレコレ(2)~創業株とストックオプショ...

    September 28, 2015

    Startupの資本構成(Capitalization Structure)に関するアレコレ(1)~発行可能株式数~

    September 22, 2015

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(8)

    September 15, 2015

    WSGRでの研修継続!

    August 18, 2015

    政策、ドローンのその後など

    July 25, 2015

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(7)

    July 11, 2015

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(6)

    June 30, 2015

    Uberのピンチ?

    June 18, 2015

    COPPA(1)

    June 14, 2015

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(5)

    May 30, 2015

    検索アルゴリズムと表現の自由~ Zhang v. Baidu

    May 27, 2015

    良く出来過ぎている国、ニッポン

    May 23, 2015

    原始定款の設計① スタートアップに取締役会は必要か

    May 17, 2015

    米国営業秘密保護法(2015年5月snap#1)

    May 11, 2015

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(4)

    May 9, 2015

    シリコンバレー短信 (1)

    May 5, 2015

    忘れられる権利 雑談(2)~Right to Obscurity、新カリフォルニア州法など

    April 28, 2015

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(3)

    April 24, 2015

    ゴールデンステート・ウォリアーズの挑戦

    April 22, 2015

    忘れられる権利 雑談(1)~米国の受け止め方

    April 17, 2015

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(2)

    April 14, 2015

    シェアリング・エコノミーと業規制 (2) ソーシャル・レンディングと貸金業

    April 11, 2015

    投資戦略としての特許潰し、特許を弱くするベクトル、など

    April 8, 2015

    シェアリング・エコノミーと業規制 (1)

    April 6, 2015

    Convertible Note/Convertible Equityのキホン(1)

    April 4, 2015

    アメリカでの会社設立(11)~各種書面への調印~

    April 1, 2015

    Please reload